きれいな肌 #2肌のきめ
皮膚表面を拡大すると,キルティング加工のように見えます。刺し縫いしてくぼんだ部分は皮溝(ひこう),もりあがった部分は皮丘(ひきゅう)と呼ばれます。この「皮膚表面のこまかな模様」が「きめ」です。
皮丘が規則正しくタイルを敷きつめたように並んでいる皮膚は,肉眼で見ると「すべすべ」「ふっくら」で,皮膚表面どころか皮膚全層が透き通るような,まるで皮膚色の蛍光色で発光しているような印象を与えます。この「すべすべ」は「ツルツル」とは違います。皮膚表面に全く凹凸がなくなった場合(例えば高齢で皮膚が薄くツルツル光っている感じの方などがこれに当てはまります),表面は光っていますが「ふっくら感」は感じられません。実際,水分量・油分量を測定してみると「ツルツル」皮膚では水分・油分ともに低くなっていて,ご本人の感想として「化粧のりが悪い」ようです。
皮溝の走行が不規則になり,皮丘の大きさ・高さ・形もバラバラとなり、皮膚表面に細かいデコボコができると,光を鏡のように反射することができずに乱反射となり,肌がくすんだように見えてしまいます。
「きめ」を整えるには角質層のうるおい、つまり以下の3つが重要です。
1)皮脂膜:皮脂腺から出た脂の膜
2)天然保湿因子:角質細胞の中にある尿素やアミノ酸などで,角質細胞自身の水分を保つ成分
3)細胞間脂質:角質細胞の間のすきまを埋めている脂で,角質細胞をレンガに例えると,細胞間脂質はセメントにあたります。
皮脂膜,天然保湿因子,細胞間脂質の中でも細胞間脂質が一番重要です。
細胞間脂質とは?
角質細胞同士の間を埋めている脂で,その構成成分はセラミド(50%)や遊離脂肪酸(20%)などです。セラミドは,化粧品にも含まれるようになっていますので,皆さんも耳にされたことがあるかもしれませんが,主にほ乳類の脳や酵母エキスから抽出されます。このセラミドの量を年代別に調べてみると,50才代のセラミド量は20才代にくらべると半分以下になっています。
細胞間脂質を増やすには?
食事で細胞間脂質の合成量を増やすには,原料となる「コレステロール」を取ります。コレステロールは動脈硬化など生活習慣病の原因となることもあるので,取りすぎは良くありません。目安として,卵を1日1個食べれば十分といわれています。このほかに,イワシやサバなどの青魚に含まれているEPAやDHAなどの脂肪酸も細胞間脂質の補給に有効です。
細胞間脂質を減らさないためには?
最も効果的といわれるのが,入浴前に椿油などオイルを塗ってからお風呂に入ることです。しかし,家族が何人も同じ浴そうに入る場合はそういうわけにはいきませんので,保湿効果のある入浴剤を使います。また,適度に汗をかくことは,肌の乾燥を予防するのに有効です。基本的には,運動により汗をかきますが,トウガラシなどを使った食事も効果があります。
細胞間脂質を増やし肌のきめを整えるには、上記のように、なかなか手間がかかります。手っ取り早く角質層にうるおいを与えてきめを整えたい場合は、保湿剤をぬります。保湿剤の種類は、市販のものでもかまいませんが、乾燥が強い場合などは、皮膚科で保湿剤を処方してもらいましょう。処方可能な保湿剤が何種類もあり、皮膚の状態や使用感の希望に合わせてもらえると思います。